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Special Session
特別対談

堀澤大吉(画家)×安武良祐(アートフォーラム千 オーナー)

ここはアートを媒介として
人々のつながりを育む場所

2019年12月某日、福岡県で活動する画家・堀澤大吉さんが個展開催にあわせアートフォーラム千に来館。
当日は堀澤大吉さんとアートフォーラム千オーナー・安武良祐による対談が行われました。
表現者の立場から感じたアートフォーラム千の魅力とは?
オーナーの立場から伝えたいアートフォーラム千の目的や機能とは?
個展会期中のひとときに繰り広げられたトークの模様をお届けします。

堀澤
 初めてここに来た時、「このような入り組んだ住宅街の急な坂を登った先に、はたしてギャラリーがあるのか」「そして人が来るのだろうか」と心配していたんです。でも、この建物に一歩足を踏み入れた途端、この空間の魅力に引きこまれました。そして、初めてこの場所に訪れた僕のファンの人たちも「ここはまるで隠れ家みたい」「自分が好きな絵をゆっくり落ち着いて鑑賞できる場所があるって素敵」って口々におっしゃるんですね。また、天井の高い美術館と違って、ここの照明(スポット)は、作品の当てたい位置に光を当てることができるのが良いですね。搬入・設営の時、僕が常日頃から「こういう色で見てほしい」と思っている色がきちんと出すことができたことに感動を覚えました。このような環境の中で、作品を展示するだけではなく、来場者の方々とコミュニケーションを図ることができる。それが、アートフォーラム千の魅力だと思います。
安武
 それはまさに私が意図していたことで、大変うれしく思います。アートフォーラム千の主目的は、作家さんを中心に、色々な人たちが集まってお互いにコミュニケーションを深めていただくことなんです。ここにはゆったり寛げるバーカウンターもあります。良い雰囲気の中で一杯傾けながら芸術談義に花を咲かせるのも一興ではないでしょうか。私の立場から申し上げますと、ギャラリーとはアートを媒介として人々のつながりを育む場所であると考えています。美術館では国内外の歴史的美術から現代美術まで、 幅広い分野の芸術を積極的に展開していますよね。一方、私どもアートフォーラム千では、作者と来場者の人間関係が深まっていくような豊かなコミュニケーションの場所として、プロ・アマジャンルを問わず多様なアートを展開しているんです。
堀澤
 僕にとってギャラリーとは、人に自分の世界観を見てもらい、自分の感覚で描いた絵が見る人にどのように影響を与えているのかを知るための場所です。来場者の方々の反応を見たり、僕の作品に対してどういう感想を持ったのかを聞いたりすることで、得るものがたくさんありますし、それが絵を描き続ける原動力になるのです。高い評価をいただいた場合でも、決して図に乗らず、自分を戒める。常に向上心を持つために必要な場所といえるでしょう。

豊かなコミュニケーションが、
表現する側と見る側の感性を磨いていく

安武
 鑑賞する側にとっても作者の声を直接聞くことや人柄に触れることは非常に貴重なことなんです。作品を見て感動するだけではなく、作家さんがどのような気持ちや意図でお描きになったかを知ることで、より深く作品に引き込まれていくと思います。作家さんが来場した際は、積極的にコミュニケーションをとることをおすすめしたいですね。それを叶えるために、ゆったりと寛げる談話スペースもご用意しています。
堀澤
 鑑賞する側の反応を見るのは、本当におもしろいんですよ。以前、個展を開催した時の話ですが、完成時に「良い作品ができた!」と喜んだ自信作がそれほど反響を得られず、チャレンジの気持ちで描いた従来とは違うテイストの作品が高い評価を得るということがあったんです。感性や捉え方は人それぞれ違うということを改めて実感させられました。そんなふうに人の反応を見ていると新たな発見がありますし、大変勉強になります。それが個展をやっていて一番面白いところです。
安武
 ところで近年の家の造りの流行りなので仕方ないのですが、床の間がないというご家庭が多くなってきているようで非常に残念に思います。昔の家庭には床の間があったり、どこかに絵が飾ってあったりする環境がありました。しかし今日、マンション暮らしの中で絵が置いてある家庭は少なくなっているのではないでしょうか。そういうところで子どもたちが育っていきますと、子どもたちの世界で何か嫌なことがあって家に帰ってきても、何も慰められるものがない。そこに一枚のお気に入りの絵があれば、その絵がその子どもを慰めてくれると思うんです。絵が一枚あるだけでその子の人生は変わるかもしれない。それほど、絵画って大事なものだと思うんですね。だからこそ、子どもさんのためにぜひご家庭でも絵を飾っていただきたい。そんな思いを伝えていくことも、アートフォーラム千の目的の一つなのです。
堀澤
 このような場を作っていただいて本当に感謝しています。展示する場所がないと絵というのは自分の自己満足だけで終わってしまいます。見てもらってはじめてその絵の価値というものが出てくると思うんですね。そして、絵を見る側にも感受性が求められます。いくら良い絵を飾っても、見る側にその良さを感じ取る感覚がないと、それは良い絵ではなくなってしまいます。作者と見る側、両方の感性が合致して初めて作品は生きてくるのではないかと僕は思うんです。
安武
 そのためにも、やはり多くの方に当フォーラムに集まっていただき、芸術談義に花を咲かせ、感性を磨き合っていただきたいと思います。そういった機会を今まで以上に増やすためにも多くのアーティストの方にここを活用していただきたいと強く思っています。
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